国立療養所愛媛病院には、昭和30年代には1,000人を超す結核患者さんが療養されていました。時代が移り現在では、活動性結核患者さんはわずか30名足らずに激減しています。愛媛ではこのように結核患者さんが年々減少していますが、大阪や東京では結核が広がりつつあります。この事態を重く見て厚生省(現在の厚生労働省)は2年前に結核緊急事態宣言を出し、結核の啓豪に乗り出しています。愛媛の結核の抱える問題を指摘し、この問題を皆さんと一緒に考えたいと思います。
- 1.集団感染の事例の増加:結核の洗礼を受けていない世代(結核未感染者)が増えたため、結核感染が生じやすくなっています。学校、病院、喫茶店、飛行機やバスなどの施設での感染例も報告されています。閉鎖空間で空気が淀んでいる場所は要注意です。
- 2.愛媛は高齢者人口が増加しており、高齢者結核患者も増加しています。お年寄りの特徴は結核以外に、糖尿病、肝臓病、腎障害、その他もろもろの病気を併発していることが多く、結核の治療に難渋することです。お年寄りの結核は家族の支えが一番大切です。
- 3.結核に感染しても発病するのはそのうち10%程度です。感染の有無はツベルクリン反応で判定します。学校でツ反陰性の人にはBCG接種を行い、結核の予防をしていますが、そのためツ反で陽性と判定された場合、感染なのかBCG陽転なのか判断に迷うことがあり、現場ではその解釈に頭を悩まされます。この問題に関しては、良識ある判断が要求されます。
- 4.結核の治療は普通では6カ月から12カ月で終了します。100%の治療効果がありますが、2年以内に5%に再発が報告されています。結核は早期発見、早期入院で感染は妨げます。しかし、不十分な治療、不摂生な生活では結核は治らず、耐性菌が生じー生結核療養が必要な人が全国では、2,000人もおられます。残念なことに毎年80名の耐性患者さんが新しく生まれています。結核は、愛媛では少なくなっていますが、以上のような問題もおこっています。結核の正しい知識の普及が急がれます。