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脳卒中とその予防について

 昔わが国では、病気は悪い風に当たって起こると信じられていました。脳卒中が起こると急に意識を無くしたり、麻痺を起したりします。卒然として(突然に)、意識をなくし、麻痺が現れるのは、悪い風に当たったためと考えられ、中風、卒中風あるいは、卒中という言葉が生まれたといわれます。今日でも脳卒中あるいは卒中発作と言う言葉は、世間一般に広く使われています。

 さて、この脳卒中は脳の血管が破れて起こる脳出血と、血管がつまってしまう脳梗塞に分かれます。いずれも昨日まで元気だった方が、急に動けなくなってしまうのでたいへんです。脳卒中を起こしやすい方は、大体わかっていて、血圧が高い方や、糖尿病のある方、コレステロールが高い人や、ある種の不整脈がある方に起こりやすいようです。特に脳出血と血圧の関連性は高く、食べ物の塩気を減らしたり、高血圧の薬を服用することによって血圧を下げると、脳出血の発生が減ることは明らかにされています。また、糖尿病やコレステロールなどもコントロールが可能ですので、脳卒中は、予防対策が可能な病気といえます。

 実際わが国では、脳卒中で亡くなる方は、減ってきています。しかし、脳梗塞の方や、亡くならなくても後遺症を持った方は増えてきている現象です。また大きな血管が詰まる脳梗塞でなくても、小さな血管があちこちつまる多発性脳梗塞では痴呆が起ってきます。この痴呆はお年寄りの痴呆の約半分を占めます。

 現在では人間ドックなどで脳の断面を見る検査、動脈硬化の測定や血液検査などにより脳の血管の若さを測定し、脳卒中の危険度を知ることが可能になってきています。その人その人によって脳の血管の痛む原因は異なりますので、その方にあった対策が重要です。対策は薬だけではありません。日頃の食事、お酒やたばこなどの嗜好品、睡眠等の生活習慣が大事です。日常に運動を取り入れることも、もちろん大事です。夏場は水分を十分取るようにして、血液の濃度を濃くしないようにすることも大切です。

 日本人の平均寿命はどんどん延びて、人生80年、人によっては100年になる方もおられます。痴呆や麻痺などがない、健康で豊かな生活を維持するためには、脳の血管の若さを保つことが肝心です。

( 池川 真一  )