水を抜くと癖になる?よく患者さんから言われる質問です。膝の関節に水が溜まって痛がっておられ、『水が溜まっているので抜いておきましょう。』と言うと、なかなかしっかりと説明しておきたいと思います。 膝の(膝関節に限らないのですが、膝が多いので)関節は、大腿骨と頚骨が主に接し、その前方にお皿の骨が接しています。骨の表面を軟骨がおおっていて、そこで骨が滑るようになっています。そして、そのまわりを包むように関節のふくろがあり、そのふくろの内側に滑膜と言うものがあります。関節には、常には、常に関節液と言う少しネバネバとした液体があり、それは滑膜で分泌されて、また、吸収されています。その関節液は、それがないと、いくら関節軟骨がスベスベしていても、軟骨同士が滑らず動きませんし、関節軟骨は関節液から栄養を受けています。一般に水と言うのは、この関節液を指していて、その量はだいたい3ml位に保たれています。つまり分泌の吸収のバランスが普通の状態ではとれています。しかし、何らかの原因で炎症が起きると、そのバランスが崩れてたいてい産生が吸収を上回り、関節液(いわゆる水)が溜まってくる訳です。 患者さんが関節に水を溜めてきた場合、我々はまず診断をするために、水を抜こうとします。そこで標記の会話が起こる訳ですが、関節液を抜き、(中には水ではなく血だったりすることもありますし)関節液の性状を見たり検査をして、他のレントゲンとかとあわせて診断をします。また、関節液が溜まっているために、膝の後ろ側がつっぱったりする症状や膝自体の痛みが出るので、水を抜くことでそういう症状が取れます。さらに変形性の関節症の場合、水を抜いてその後に軟骨を保護して潤滑油の役目をする薬を注入したりします。つまり、診断、治療に水を抜くことは必要な訳です。別の言い方をすれば、水が溜まるのが先か、水を抜くのが先か、とも言えると思います。 ただ、炎症が強いと、抜いてもまた溜まることはあります。それで癖になると言われ出したのでしょう。 ( 西本 章
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