目の成人病成人病に失明をもたらす二大病に、糖尿病網膜症と緑内障があります。前者は、糖尿病の三大合併症(他に腎症、神経障害があります)の一つであり、糖尿病患者の増加にともない急増しています。後者においては、近年、我が国の正常眼圧緑内障の多さが注目されています。 糖尿病患者は、現在全国で約700万人いるといわれ、発病後十年もすれば、患者のおよそ半数が糖尿病網膜症に罹患しているともいわれています。網膜症は、初期の段階では、ほとんど自覚症状がないため、眼科を受診されないケースが少なくありません。実は、自覚症状が出てからでは手遅れのことが多いのです。有効な眼科的治療には、網膜光凝固術、硝子体手術などがあります。しかし最も大事なのは、内科との連携です。網膜症の発病予防と進展抑制には必須です。血糖コントロールの状態、罹病期間、インスリン治療の要否、網膜症の進展状況などに応じた、眼科と内科との連携治療が必要です。糖尿病と診断されたら、自覚症状の有無にかかわらず、必ず眼科で検査を受けてください。 我が国において、1980年代終わりに実施された大規模緑内障疫学調査の結果、40歳以上の国民の正常眼圧緑内障(眼圧は10〜21mmHgと正常範囲)の有病率は約2%もあることがわかりました。従来の眼圧の高い緑内障の約2倍あることもわかりました。我が国における正常眼圧緑内障の高有病率は、日本人の平均眼圧値が欧米人のそれより低いこと、さらに日本では検診時に撮る無散瞳眼底カラー写真で、視神経乳頭およびその周囲の神経の評価が可能なことにより、欧米での評価法に比べ、早期の正常眼圧緑内障の発見率が高いことが考えられています。眼圧のみでは、多くを見逃してしまいます。ごく最近発表された疫学調査でも、本邦の正常眼圧緑内障の有病率は3.6%とさらにアップしました。 ( 生島 操
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