SARS(重症急性呼吸器症候群)2003年も2ヶ月あまりを残すばかりとなってなったが、春先から新興感染症であるSARS(重症急性呼吸器症候群)のことが連日、報道され続けていたのはと未だ記憶に新しい。 3月12日にWHOが緊急情報を出して全世界に警戒を呼びかけたSARSは、4月から5月にかけて急速かつグローバルに拡大し、私達にとっても大きな脅威となった。幸い7月になって、最近の地域内伝播確認地域として最後まで残っていた台湾でも安全宣言がだされ、にとまずは事態は終息することとなった。 特に感染者の多くかった中国では徹底した感染予防策が取られたことをご存知の方も多いであろう。検問までして発熱者を見逃さないといよう努力が早期の感染終息に結びついたという意見がある一方で、専門家の間では、インフルエンザと同様に冬に流行しやすい可能性を指摘する声もある。喉元過ぎれば・・・とならぬよう、今年の冬も用心を続けたい。 SARSは、もともと多くの動物に病気を引き起こすコロナウィルスが何らかの機会に人への感染性を獲得した異変株により引き起こすことが判明している。 症状や経過は比較的、インフルエンザに似ているが、潜伏期(感染性は全くない)が2〜10日と長く、発熱、筋肉痛、倦怠感などの前駆症状が1〜2日続いた後、咳が目立つようになり、重症例では呼吸困難などの症状が3〜7日続くという。この下気道感染症状期には感染症が非常に強く、特に重症肺炎者がスーパースプレッダー(感染性が特に強い人)となる。感染者の約90%は回復する高齢者でのが高い。他方、小児においては感染性は不明なところもあるが、流行地域では小児においては軽症状である可能性が示されている。 上記をふまえて考えると、今年の冬もSARSの動向に注目して国内へ伝を防ぐ水際作戦を徹底しなければならないのはもちろんであるが、発病初期には感染症が低いSARSのみをいたずうらに恐れているではなく、日頃から一般のかぜ対策として、手洗い、うがい励行することが大切であろう。またワクチンを受けるなどインフルエンザ対策も徹底したい。なお、SARSに限らず咳が出て医療機関を受診される場合は、他の人への感染予防のためにマスクを着用していただくことも有効なことである。 ( 井上 哲志 ) |