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白内障手術と糖尿病網膜症

 一般に糖尿病患者さんの手術において、術前の血糖コントロールは、手術による傷口の治りや全身状態の管理のために重要と考えられています。白内障手術においてはどうでしょう。最近こんな報告がありました。従前コントロール不良例に急速に血糖の是正を行い手術をしたA群、コントロール不良のまま手術をしたB群、もともと血糖コントロール良好で手術をしたC群の3群の間で、糖尿病網膜症のなかでも特に視力と密接な関係にある糖尿病黄斑症の悪化について比較検討されました。結果は術後にA群のみが悪化し、B群とC群では有意な差はありませんでした。白内障手術は、血糖の是正(時にはゆっくりとした)という治療の只中で行われるべきものと考えます。

 次に白内障手術とともに、糖尿病網膜症に対し網膜光凝固が必要な場合はどうでしょうか。同報告は、術後にできるだけ光凝固をしてから白内障手術を行ったD群と、術前には行わず術後に光凝固を行ったE群を比較しました。糖尿病網膜症は、D群において有意に進行しました。白内障でレーザー光の届きにくい眼底を無理して術前に網膜光凝固を行う必要性は少ないようです。もしくは光凝固による炎症がおさまるまで、手術を待つべきでしょう。

 糖尿病患者さんや糖尿病網膜症のある目の白内障手術では、よい視力を得るためのキーワードは「そのままに」だと考えています。

( 生島 操 )