東温市医師会

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マイコプラズマ感染症

 つい最近、東温市のある小学校において、マイコプラズマという病原体による感染症が多発しました。そもそもマイコプラズマというのは、名称の響きが与える印象ほどには感染性や病原性が強いわけではなく、小児の感染症としてはありふれたものです。

 それにもかかわらず、今回、話題として取り上げますのは、小規模とはいえ流行していると言わざるを得ない状況が、私にとっては初めての経験だったからです。しかし、それ以上に印象的だったのは、その状況を危 して学校の養護の先生に相談申し上げると、学校長、学校医の先生と協議されて翌日には臨時の保健便りを配布されるという、きわめて迅速な対応をとって頂いたということでした。そして、適切に配慮された保健便りを通して、児童ならびに父兄の方が関心を持たれ早めに対応された結果、散発はしているものの流行としては急速に終息の気配を見せるにいたりました。もう少し早く学校に相談すればよかったと反省する一方で、感染症を予防するためには、個人が注意するだけでは不十分であり、学校や地域全体で取り組むことがいかに効果的であるかということを実感した次第です。

 せっかくですから、残された紙面でマイコプラズマ感染症の概要に触れておきます。

 マイコプラズマは気道(のどや気管支など)のどこかに感染して、増えていくのですが、症状が出るまでに概ね2週間の潜伏期があります。どこで増えるかによっても異なりますが、一般的な症状としては乾いた咳が続くことが特徴です。高熱にはなりにくいのですが、発熱し、全身がだるい、食欲が落ちるなどの症状が出始める頃には肺炎が出来上がっていることが珍しくありません。

 肺炎が起こるのは、からだが強く反応し過ぎた結果であることが多く、病原性の強い細菌による一般的な肺炎像とは異なるため「異型肺炎」と呼ばれます。マイコプラズマに対するからだの反応(免疫反応)には個人差があり、全員が肺炎になるわけではありません。また肺炎になったとしても、小児の場合はほとんどが入院することなく、適切な抗生剤を十分な期間、内服することにより改善しますので安心してください。

( 井上 哲志 )