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『今の値は良い』では不十分:生活習慣病

 高血圧の治療は、様々な研究から、外来での血圧だけでなく、起床時と眠前に、家庭血圧の測定をすることが有用であることが明らかにされました。例えば、起床時の血圧が高い(早朝高血圧)と、脳卒中の発症が約6倍になったという報告があります。その頻度は決して少なくなく、治療中の高血圧患者さんの20%強と言われています。しかし、その中にもタイプがいろいろあり、当然、それぞれ治療法が異なります。つまり『外来での血圧の値が良い』だけでは、不十分なのです。

 次に糖尿病の治療についても一例をあげます。肥満のある患者さんは、インスリンの効き目が悪くなっており、膵臓に負担をかけ、初期にはインスリンは健常人より多く分泌されています。質の悪化を数でまかなっているのです。ここで、血糖降下作用の最も強いSU剤という系統の薬のみ使うと、過労状態の膵臓に、もっとインスリンを出せと鞭を打ち、結果として『今の血糖値は良い』状態になっても、膵臓はいずれ回復不能に陥りやすくなり、インスリン治療が必要になる時期を早めてしまうことにもなりかねません。

 次に、私が勤務医時代に行った研究でわかった、高脂血症の問題点を説明します。高脂血症の患者さんに、食事療法を行うと、コレステロールは1ヵ月後に一番良く下がりました。この1か月という点が問題なのです。高脂血症の検査は食事を抜いて行いますので、月に1回受診される患者さんでは、検査の1ヶ月前にその旨を説明します。すると、患者さんは、多少でも食事により気を付けられ、結果的に、(本来の値より)良い値が出てしまいます。つまり『コレステロールの値が良い』患者さんの中に、検査直前の1ヶ月以外の値は良くない患者さんも混じるのです。そうかと言って、毎月検査をするのは得策ではありません。これには簡単な解決策があり、上記文章中に、6文字のヒントがあります。

 皆の力で、今も将来も、良くしましょう。

( 小林 卓正 )