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女性に多い片頭痛

  ペインクリニック外来に来院される方々の主訴には、頭痛、肩こり、腰痛、膝痛などがあります。今回は女性に多い片頭痛についてのお話です。

  片頭痛は、発作的に拍動性の頭痛が数時間持続し、やがて頭重感や眠気に変化し、1〜3日間で軽快するものです。頭の半側が痛むことが多いため「片」頭痛といわれますが、中には頭全体が同時に痛む例や、半側の痛みに続いて反対側が痛くなる例もあります。痛みの症状や程度は様々ですが、痛み以外に嘔気や嘔吐を伴うこと、光や音に対して過敏になること、日常動作により症状が悪化することなどが大きな特徴です。この様な発作を反復するため(反復の頻度や間隔も様々です)、仕事や学業などの社会生活に支障をきたす厄介な疾患です。

  片頭痛は小児や男性にも起こりますが、思春期以降は圧倒的に女性に多くなります。閉経以後は再び男女差がなくなります。また女性の6割程度は月経に関連して起こることから、女性ホルモンの影響が強く示唆されますが、片頭痛の病態は完全には解明されていません。内分泌ホルモンや他の何らかの原因で脳血管が拡張し、神経炎症性物質が血管外に放出され、それによる痛み刺激が神経終末から脳幹部、さらに大脳皮質に伝わり、痛みを感じるものとされています。

  片頭痛の治療は、発作時の急性期薬物治療と平時の予防療法の2つに分けられます。

  急性期治療には、トリプタン製剤が第一選択です。これは脳内のセロトニン受容体に選択的に作用し、脳血管の拡張を妨げる薬物で、発作直後あるいは起こりそうだと思ったらできるだけ早期に服用することが肝要です。発作が完全に起こってしまうと、残念ながらあまり効果は期待できません。このような場合は、通常の鎮痛剤や制吐薬に頼らざるを得ません。ただし安易な鎮痛剤の継続は、慢性的な頭痛(薬物乱用性頭痛)に移行することがありますので、適正な服用と発作予防が重要です。

  次に、予防療法ですが、脳血管の安定化を目的とした塩酸ロメリジンが第一選択です。またストレスを避け、規則正しい食事や睡眠をとることも大切です。喫煙や飲酒も良くありません。各自で普段の生活や食事内容等を書き留め、どのような状況下で頭痛が生じているかを知るために「頭痛日誌」をつけることも有効な予防策であると思います。さらに近年は、片頭痛に共存する他の疾患をコントロールすることも重要であると言われています。たとえば、喘息を合併する人はその予防薬を内服すること、脳梗塞危険因子(高血圧や高脂血症など)を持つ人はその危険因子を減らすことにより、脳血管が安定化し発作の予防に繋がります。

(山内 康裕)