人工関節置換術とアンチエイジングここ数年、アンチエイジングという単語がいろいろなところで目にされるようになりました。アンチエイジングとは抗加齢医学のことで、動脈硬化、高血圧、糖尿病、認知症など、いわゆる老化を少しでも遅らせようという目的で様々な研究がなされています。アンチエイジングと人工関節と何の関係があるの?と思う方も多いと思いますが、これが大きく関係していると私は考えます。人工関節置換術とは、変形性膝関節症や股関節症(主に加齢とともに軟骨がすり減り膝や股関節に痛みが出る疾患)や関節リウマチに対して行われることが多く、傷んだ関節の表面を取り除いて、人工関節部品(金属、プラスチックなど)に置き換える手術です。 アンチエイジングの最近の研究成果では、適度な運動と笑いに効果があるとよくいわれています。変形性関節症や関節リウマチが進行し、関節の痛みが強くなると、散歩や買い物、家事、旅行など動くことがおっくうになり、適度な運動どころではなくなります。運動不足が体重を増加させ、メタボリック症候群に繋がったり、体重の増加が軟骨のすり減りや骨の変形を増悪し、関節の痛みがより強くなったりと悪循環に陥ります。また痛みのせいで心から笑う事も少なくなり、気分が沈みこみ、ひどくなると認知症やうつ病に繋がることも考えられます。 このような悪循環を断ってあげるのが人工関節置換術です。手術後は多くの方が痛みはなくなります。それにより散歩や旅行が可能となり、心も明るくなります。適度な運動ができるようになり、笑いが戻ってくることで、アンチエイジング効果が高まります。もちろん手術に伴う合併症はゼロではありませんが、最近はできるだけゼロに近づくよう様々な工夫がされています。日本では人工膝関節置換術が年間約7万件、人工股関節置換術が年間約4万件なされていて、決して特別な手術ではなくなってきています。また、人工関節部品も進化を続けており、耐久性も良くなり、95%の方が15年以上もつという報告がされています。今現在痛みを我慢されている方、今後の人生のためにも人工関節置換術を検討されてみてはいかがでしょうか? (濱本 雄一郎)
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