肺MAC(マック)症について −肺結核とは違う感染症−皆さんよくご存知のように結核は結核菌によって起こる病気で、その80%は肺結核です。結核菌はヒトからヒトに感染し、かつては日本で最も恐れられていた病気でした。結核菌は抗酸菌という細菌の仲間で、抗酸菌は世界中で約160種類以上発見されています。結核菌以外を非結核性抗酸菌と総称し、埃や土、水などの日常生活環境に存在します。非結核性抗酸菌の形は結核菌と似ており、感染による症状も似ていますが、結核とは別の病気です。ヒトからヒトへ感染することもありません。多くは肺に感染することが多く、それを肺非結核性抗酸菌症といいます。 肺非結核性抗酸菌症は、肺に結核後遺症などの病気を持っている人に発病する場合が多かったのですが、最近では従来健康な中高年の女性に増えてきています。多くはアビウムやイントラセルラーという菌が原因の肺MAC(マック)症で、肺非結核性抗酸菌症の約80%を占めます。肺MAC症がなぜ女性に多いかははっきりしていません。 感染しても最初は症状がありませんが、進行すると咳、痰、発熱、倦怠感、体重減少などが見られます。診断には胸部レントゲン検査やCT検査、喀痰抗酸菌検査を用います。痰がでない場合には気管支鏡検査を行うこともあります。 肺MAC症は、結核と違い診断後直ちに治療をするわけではありません。症状が軽い場合は3〜6ヶ月毎に経過をみます。症状があり病巣が広がっている場合や、以前に比べ悪化した場合は治療を開始します。治療薬はリファンピシン、エタンブトールの抗結核薬と抗生物質であるクラリスロマイシンです。時に注射薬を追加することもあります。薬が効きにくいため、治療期間は結核に比べて長くなりますが、確実に飲むことが大切です。またバランスの取れた食事、規則正しい生活、疲労をためない、適度な運動など日常生活の注意も必要です。 (阿部 聖裕)
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