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腰部脊柱管狭窄症と足の麻痺

新聞やテレビなどでも紹介されている病気なので皆様御存知でしょう。主な症状は足のしびれ、痛み(神経痛)、間欠跛行(立っていたり歩いたりすると下肢にしびれ、痛みなどが生じて歩きにくくなってしまう)です。多くはありませんが深刻な症状として足の筋力低下(運動麻痺)と排尿障害があります。

今回は運動麻痺についても少しお話します。腰部脊柱管とは下肢に行く神経の通り道ですが、それが狭くなり神経をしめつけるために症状がおきるのです。高齢化が進み手術が必要となる腰椎疾患の筆頭です。初めはじっとしていると無症状ですが次第に安静時にも足がしびれるようになったり、神経痛がでたり歩ける距離が短くなったりします。薬など手術以外の治療で症状が軽くなればそれ でいいのですが、効果がなく次第に症状が強くなると手術が必要になることがあります。神経痛を伴う場合は辛いので薬や注射が効かないと患者さんも手術を決心しやすいですし、活動性が高い患者さんでは、間欠跛行で長く歩けなくなると日常生活が困るため手術を決断するきっかけになります。

さて、腰部脊柱管狭窄症の運動麻痺では、多くの場合初めに第1趾や足を上に反らせる力が弱くなり、わずかな段差に足がひっかかってつまづきやすくなります。運動麻痺は徐々に悪くなり、足首が上がらなくなって歩くのが困難になります。腰部脊柱管狭窄症では痛みと間欠跛行は手術で随分よくなりますが、運動麻痺は手術をしてももとに回復しにくいですから麻痺が出たら早く手術が必要です。本当は運動麻痺がでる前に手術すると良いのですが・・。

しかし、しびれや軽い運動麻痺だけの場合、特に高齢の患者さんは医師が手術を勧めてもなかなか決心がつきません。症状が進行していても、御家族ももう高齢だからといって手術をためらい、ずるずると時間が経って麻痺がひどくなっていきます。もちろん手術を受けるかどうかは患者さんご自身が決定することですが、そうなってから手術をしてもよくなりません。運動麻痺があると高齢者は益々動かなくなり、転倒しやすくなって骨折や寝たきりの原因になりかねません。

今は麻酔方法や全身管理の技術が進んでいますし、術後は通常翌日から立つ練習を開始しますので、年齢が80歳以上でも可能であれば積極的に手術を行います。

正確な診断、詳しい治療方法は専門医に相談し、時期を失しない適切な治療によって、介護に頼らず元気で自立した生活が送れるように頑張りましょう。

(松田芳郎)