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健康寿命について

「いつまでも元気で長生きしたい。」という願望は、みんな同じでしょう。日本は世界有数の長寿国であることは御存じのとおりです。厚生労働省によると、2014年の平均寿命は女性86.8歳、男性80.5歳で、ともに過去最高を更新し、女性は3年連続世界一、男性は前年4位から3位になったとのことです。この事は、喜ばしいことですが、ただそうとばかりとは言えません。医療の向上等に支えられ長寿になった半面、長期間にわたり寝たきりのままの状態の方もおられます。そこで最近は、平均寿命の他に、健康寿命という概念が提唱されてきています。

健康寿命とは、身体的・精神的に健康上の問題がない状態で、日常生活が制限なく送れる期間と定義されています。従って、平均寿命と健康寿命の差は、“日常生活に制限のある不健康な期間”という事になり、医療費や介護給付費の多くを消費する期間と言えます。この2者の差(不健康な期間)は、平成22年の統計で男性9.1年、女性12.7年とされていますが、今後、平均寿命が更に延び、健康寿命との差が拡大することになれば、医療費や介護給付費が益々増大することになります。

逆に、健康増進、疾病・介護予防などによって、この差を短縮することにより、個人の生活水準低下を防ぐだけでなく、社会保障負担の軽減も期待できます。従って、平均寿命ではなく健康寿命を伸ばす、言い換えると、寝たきりにならないことが大切です。その寝たきりの原因としては、脳血管障害が1/3以上を占め、骨折・転倒、認知症が続きます。脳血管障害には、脳梗塞・脳出血・クモ膜下出血等がありますが、その予防には、高血圧症・脂質異常症・糖尿病等の生活習慣病の予防と治療、禁煙や運動などの取り組みが重要です。定期的に健診を受け、早めにかかりつけ医と相談しましょう。

最近、心房細動(不規則な心臓の動きのひとつ)による脳卒中(脳塞栓症)を予防するプロジェクトがあります。心房細動により出来た血液の塊が脳血管に運ばれて重篤な脳梗塞を起こしてしまいますので、早期発見と治療が必要です。手首のすぐ手前(心臓寄り)で脈を簡単に触れる事ができますので、時折自分で脈を見る事も重要です。また、その他の脳梗塞やクモ膜下出血は、頭部MRI/MRA検査で未然に防ぐことも可能な場合があります。是非一度検査してみましょう。

(中野  敬)