東温市医師会

ホーム > ドクターの健康百科 > ピロリ菌除菌治療

ピロリ菌除菌治療

ピロリ菌は長く胃の中に住み着き、毒素を出して胃の粘膜を壊して慢性炎症を引き起こします。これが慢性胃炎となり、胃癌につながります。

国内の感染者は推定3,500万人で、ほとんどは50歳以上です。このうち毎年0.5%が胃癌を発症すると言われています。毎年約5万人が胃癌で亡くなり、肺癌、大腸癌に次ぐ第3位となっています。胃癌患者の大部分はピロリ菌感染者です。

高齢者に感染者が多い理由として、日本の上下水道の整備が不十分で衛生状態が悪い時期に感染したことが推測されています。新たに感染するのは5歳以下の乳幼児期で、胃酸の分泌が悪く、胃の粘膜の発達が十分でないためと考えられています。

ピロリ菌の除菌治療の保険対象はこれまで胃潰瘍や十二指腸潰瘍などに限定されていましたが、2013年2月にピロリ菌感染慢性胃炎にまで保険適応が拡大されました。ただ内視鏡検査を受けて、胃炎を確認することが必要です。除菌により胃癌の発生率は3分の1に減ると言われています。

除菌は3種類の薬を併用して行います。2種類の抗菌薬「クラリスロマイシン」「アモキシシリン」と胃酸の分泌を抑える薬の1日2回、7日間服用します。途中で服用を止めてしまうと除菌の成功率は低くなるばかりか耐性菌を生む原因となります。「アモキシシリン」はペニシリン系の薬でアレルギーのある人は別の薬を使いますが、保険適応外となります。

1回目の治療で除菌できるのは約7割の人で、残り3割は「クラリスロマイシン」を別の薬に換えた3剤で治療します。2回目までで約95%の人が除菌できます。

一度、除菌が成功すれば再感染することはほぼなく治療効果は大きいですが、除菌後もしばらくは胃炎が残存し、胃癌のリスクは残るため、その後も検査が欠かせないので注意が必要です。特に除菌後5年以内は胃癌の発生に注意する必要がありますが、10年以上経ってから胃癌が発生した例もあります。1年に一度は内視鏡検査を受けることをお勧めします。

(古田  聡)