東温市医師会

近視の話

学生の近視は依然として増加している。

学校検診では、370方式(さんななまるほうしき)と言われる方法が一般的である。これは、0.3、0.7、1.0のランドルト環(視力検査でおなじみのCの字様の視標)を用いて、学生の視力をA、B、C、Dの4段階に判定する。これは、学校での黒板の見え方を基準に分類している。

最近の文部科学省の統計では、裸眼視力1.0未満の小学生の割合、すなわちB以下が約40%であり、学童の近視は増加している。中学生、高校生になると更にその割合は増加していき、高校生ではB以下が60%を超えるようになる。齲歯(虫歯)の頻度がこの40年減っているのとは対照的である。

近視は軽く考えられがちだが、病的近視(強度近視)になると、眼底変化がおこり、視機能障がいを伴う。強度近視は、視覚障がい者の内7.8%の6位、失明者のなかでは6.5%の4位と障害原因の上位であり、決してばかにできないものである。

近視の発生や進行因子としては、先天的な因子(遺伝)と後天的な因子(環境)がある。ここ40〜50年で我々を取り巻く環境因子で明らかに変わったものとしては、テレビ、パソコン、携帯電話(スマートフォン)、ゲーム機等の普及がある。これらによる近業時間の増加、屋外活動時間の短縮、食事内容や睡眠(時間と質)などのライフスタイルの変化に先天的な因子が合わさって近視人口の増加している可能性は高いと思われる。

屋外活動時間が長いと近視の発生や近視の進行を抑制することが報告されている。屋外活動時間を構成している因子(光の照度、遠方視、運動、ビタミンDなど)のうち何が一番影響するのかは、よくわかっておらず研究が期待される。

近視の進行予防に期待されるデバイスとして、特殊球面レンズ、多焦点コンタクトレンズ、オルソケラトロジー、低濃度アトロピンなどが期待されている。ただ、効果の強さ、エビデンスの蓄積、経済的な負担などのクリアすべき課題も多い。

(石川  明邦)