交通事故による首の痛みで来ると、たいていの方が言われます。
結論から言いますと、そういうことはありません。
まず、「ムチ打ち」とは、追突されて(代表的な事故として)首がムチのようにしなってしまう、損傷の形態をいうのであって、正式な病名ではありません。
首には7つの骨が重なっていて、それぞれの骨の間は、椎間板という軟骨と、二つの関節でつながっています。その椎間板と関節に囲まれるように、頭から連なって下りてきた脊髄があります。ムチ打ち損傷を受けると、その7つの骨が、椎間板や関節の所で互いにずれるように力がかかるのです。いわゆる捻挫を起こすわけです。(骨に損傷が無い場合)首が悪くなると、椎間板から軟骨が出たり、関節からは骨が出たりします。そうすると、脊髄から枝分かれして、手にいく神経や、脊髄自体が圧迫されることになり、手や足がしびれたり動かなくなったりして、いわゆる麻痺を起こすことになります。そうなると手術をしないといけなくなるわけです。
人間の体は、常に徐々に老化(変性)しています。特に、首は重たい頭を支えているので、起きて生活することでストレスがかかります。頭を動かすことで、首にはズレの力がかかるし、動かさなくても、頭の重みで圧迫されます。言い換えると、常に、毎日毎日、けがをしているようなものでしょうか。ただ、その毎日のけがは、非常に微々たるものなので、人間の体はそれに対処してしまうのです。ただ、微々たるものでも積み重なると大きなものとなります。ですから、痛くないから、首は大丈夫。というわけではなく、徐々に徐々に、悪くなっていることが多いわけです。
ムチ打ち損傷も、そのけがの大きなものと考えてもらえればいいと思います。一度にいつも毎日のけがの何倍、何十倍のけがをした。ですから、対処できずに痛みが出ます。でもまだ首自体がほんとに悪くなければ、また痛みは取れます。つまり一度治るわけです。しかし、その後、また毎日けがを重ねていくことで、首の弱い方は、ほんとに悪くなってしまいます。そのけがの割合はというと、毎日重ねていくけがの積み重ね方が圧倒的に大きいのです。
ですから、ムチ打ち損傷を受けてなくても手術を受けておられる方はたくさんおられるというわけです。