「心臓が悪いと運動をしてはいけない」と思われている方は多いのではないでしょうか。
実は、病状が安定していること、運動が禁忌とされる心臓病ではないこと、また適当な種類の運動を適切な強度・時間で行うこと、という条件を満たせば、「心臓が悪くても運動をしてもいい」のであって、さらに誤解を恐れずに言うならば「心臓が悪くても運動をした方がいい」のです。それほど、今日の医学では運動療法は心臓病患者さんにとって必要な存在となっています。
運動療法を中心とした心臓リハビリテーションは、以前は心臓病の急性期に長期間の安静を余儀なくされた患者さんの社会復帰に向けた訓練という意味合いが主でした。しかし、近年様々な心臓病に対する運動療法の効果が実証されたこともあり、現在心臓リハビリテーションは心臓病の再発予防を主目的とした積極的な治療法として位置づけられています。また、運動療法だけ行うよりも、栄養・服薬・生活指導等も併せて行った方が再発率や死亡率が低くなるという研究結果が報告されたことから、現在は多職種(医師、管理栄養士、薬剤師、理学療法士、看護師など)がそれぞれの専門分野を担当して患者さんの指導・治療にあたる、包括的心臓リハビリテーションが主流となっています。
包括的心臓リハビリテーションは、本邦ではまだ歴史が浅いこともあり、十分認知されているとは言えません。また、施行している施設も限られています。今後、包括的心臓リハビリテーションを行う施設が増加し、安全で効果的なリハビリテーションプログラムが提供されることにより、患者さんの生命予後が改善し、生活の質が向上することが望まれます。