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においの障害

 においの種類は40万種とも言われ、においの感覚(嗅覚)は生活の上で無くてはならない感覚のひとつです。料理のにおいは食欲をそそり、ガスもれのにおいなどは危険を察知するために欠かせません。一度経験したにおいは忘れることがなく、その特有なにおいにより過去の事を思い出すこともあります。

 においは鼻の中の上方の脳に近い嗅裂(きゅうれつ)という狭い場所で感じます。においの分子がこの部位に到達すると、においの種類に応じて感覚細胞が刺激されて信号を脳に送ることで匂いを感じます。匂いの感覚細胞の種類は味覚を感じる細胞の10倍以上あり、嗅覚の方が味覚より敏感といえるでしょう。

 嗅覚は高齢になると徐々に減退しますが、病気のため障害されることがあります。原因としては鼻風邪や副鼻腔炎(蓄膿症)などが多く、鼻の中の空気の通りが悪くなり、においが嗅裂に到達しないために起こります。また副鼻腔炎ではその炎症のために、においの神経が麻痺したり、風邪の後にも同様に匂わなくなることがあります。事故などで頭に衝撃が加わった時に、においの神経が切断されて嗅覚が障害されることがあります。

 嗅覚障害の治療では、鼻の中の空気の通り道に異常がないか調べ、ビタミン剤を注射してにおいの感じ具合を検査したり、レントゲン撮影で副鼻腔炎の有無を調べます。原因が鼻風邪や副鼻腔炎であれば薬の服用や吸入などを行い、さらに神経の障害の場合にはステロイド薬の点鼻などを行います。治療の効果は嗅覚障害の期間が短いほど治りやすい傾向があります。においは生活の上で大切な感覚ですので、料理のにおいなどが感じにくくなった時は早めに診察を受けましょう。

(佐藤 英光)