咳の原因は気管や気管支など下気道の病気だけではありません。鼻腔など上気道に原因があることが思いの外多くあるように思われます。そのような場合、数回の鼻の処置で、しつこく出ていた咳が止まることがあります。 鼻は気道の入口に位置し、エア・コンディショナーの機能とよく似た働きをします。鼻の粘膜には分泌細胞と、表面に細かい毛を持つ線毛細胞があります。分泌された粘液で、埃(花粉など)、細菌のほとんどは吸着され、線毛の運動で鼻の後方に運ばれ、咽に落ちます。水溶性のガスもまた鼻で除去されます。その他にも吸気を加湿し適当な温度にして、下気道に負担がかからないようにする大切な働きをしています。風邪をひいて鼻炎が起こり、鼻がつまって口で呼吸をしていると気管支炎や肺炎を併発しやすくなります。アレルギー性鼻炎・花粉症では鼻からの呼吸が障害されると、アレルギーの原因物質が下気道に入りやすくなり、喘息発作をおこします。それだけではなく、鼻炎があると気道全体の過敏性が高まっていて、気温の変化などちょっとした刺激でも咳を誘発することになります。鼻の大切な働きが障害されるだけではありません。鼻汁が増えて後鼻漏となって咽に落ちています。昼間は無意識に飲み込んでいて咳の原因とはなりにくいのですが、眠ると、飲み込む力が弱まるので喉に溜まりやすくなります。気管に入り込もうとしますから、下気道を守るために咳が出ます。このような場合、夜間、起床時に咳が多くなる傾向があります。ハウスダスト、ダニのアレルギーを持っている方は顕著な症状がなくても、気道の過敏性が亢進していますので咳が出やすくなります。アレルギーの検査を受けることを勧めます。
鼻炎に原因する咳は咳止めが効かないことが多いようです。耳鼻咽喉科では処置を行うことで鼻の炎症を鎮め、機能を改善します。是非、耳鼻咽喉科を受診してみてください。
上気道と下気道は一体であるとの考え方があります。呼吸器内科と耳鼻咽喉科の医師が協力して診断と治療に当たれば、しつこい咳も治るのではないでしょうか。