若年者に比べて高齢者では薬物有害反応(薬の副作用)の発生が多いことが知られています。その原因として様々なものが指摘されていますが、特に加齢による薬物代謝・排泄能力の低下、また疾患保有数が多いことに基づく多剤併用のため薬物相互作用(飲み合わせ)が起こりやすいことが挙げられています。日本老年医学会は「高齢者の安全な薬物ガイドライン」を作成して薬物有害反応を減らす取り組みを行っていますが、医療者側の努力だけでは十分ではなく、患者さん側の御協力が欠かせません。
患者さんに御協力いただくことには、体調不良時のかかりつけ医への連絡や他の医療機関から処方があった場合の報告などがあります。高齢者は若年者と比較して脱水状態になり易く、脱水による腎血流量低下に起因する薬の排泄低下は副作用を招きます。体調不良時、特に食事や水分の摂取ができない場合にはかかりつけ医に連絡し、服薬量の調節などの対応を相談することが重要です。前述の通り疾患保有数が年齢とともに増加するという統計があり、また医療の細分化(専門化)のため、患者さんが複数の医療機関を受診することが多い状況にあります。患者さんの報告がなければ他の医療機関からの処方の有無を把握するのは困難です。多剤併用の弊害をなくすために、報告を忘れないでください。
その他の問題として、高齢者、特に後期高齢者の服薬管理能力の低下が挙げられます。認知症の中でも服薬管理能力の低下は最も早期にみられる症状とされていますが、服薬過誤(特に重複服用)から重篤な有害反応が引き起こされることがあります。本人が管理できない場合には御家族の補助や管理のもとで服用していただくことが必要です。
薬を怖がる必要はありませんが、薬の種類によっては生命にかかわる有害反応を惹起する可能性があるため、有害反応を減らす取り組みを続けることが大切です。