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光視症のいろいろ

 暗い所でも目を閉じていても、「光が見える」ことを光視症といいます。その多くは、眼内空間の8割を占める硝子体が網膜から剥がれる時に起こります。硝子体は、若い頃は透明なゼリー状ですが、加齢とともに液化収縮し、お椀状をした眼底の光受容器である網膜の中央部(椀底)から前方、すなわち周辺部に向かって剥がれます(後部硝子体剥離)。硝子体が剥がれる時の網膜にかかる牽引力も網膜は光に変換し、片眼にしばしば耳側視野の縦に走る光といった光視症を生じます。後部硝子体剥離の発生は60歳頃から急に増え、近視の程度が強いとより早期に起こります。同時に硝子体の濁りによる飛蚊症を自覚することが多く(飛蚊症については6月の同コーナーに詳述されています)、ともに網膜剥離の前兆ないし初期症状のことがあり、眼科受診が必要です。

 一方、脳神経血管系の異常な活性化によるとされる光視症があります。「ギザギザの光が見えた」、といった陽性症状と同時に、「人の顔の半分が見えなくなった」、「一部が見えなくなり、だんだんその範囲が広がっていった」などの陰性症状をもち、閃輝暗点とよばれるものです。片頭痛の前ぶれとして起こることがあります。左右眼を特定できず、片側または両側視野に広がり数十分で消失します。眼科外来では、この前ぶれだけで終わるケースが多いようですが、頭痛があれば脳神経科受診をおすすめしています。

 最近話題になった光視症では、白内障手術後眼内レンズ挿入眼にみられる、異型というか異常な光視症があります。術後に、視野に光やリングが見える陽性症状と、耳側に三日月型の黒い影が見えるといった陰性症状があり、眼内レンズは水晶体より薄いため、瞳をつくる虹彩との間に隙間ができ、横から入る光がこれらの症状を引き起こすといわれています。これはまれなことで、時間の経過とともになくなることも多いようです。もう一つは、若年女性の近視眼に好発する、急性で部分的な視野欠損に伴う光視症です。従来の眼底検査では早期に異常を見出すことが困難でしたが、光干渉断層計の進歩により、眼底写真と同時に鮮明な網膜の断面像がミクロン単位で撮れるようになり、十層ある網膜の最外層に病変があることが分かりました。この場合、網膜にかかる外力によるのではなく、網膜内で光視症が発生しているのかも知れません。

(生島 操)