「結核ってなくなった病気かと思っていたのに、まだたくさん患者さんがいるんですねぇ!」結核病棟に入院された方のご家族が病棟に来られたときの言葉です。
結核は、現在も世界の人口の1/3が感染し、毎年920万人が発病し、170万人が死亡している、単一の病原菌によるものとしては最大の感染症で、新発生患者の80%がアジア、アフリカ地域の患者です。HIVとの二重感染や、多剤耐性(治療薬が効きにくい)結核の問題があり、結核根絶を阻む大きな問題となっています。世界的にはWHOが中心となって「ストップ結核パートナーシップ」が結成され運動が展開されています。日本の結核は、蔓延期に比べるとはるかに減ってはいますが、毎年2万3千人以上が結核を発症し、2千人以上の方が結核の中蔓延国です。罹患率は徐々に減りつつありますが、アメリカ、ヨーロッパの先進国並になるには20〜30年かかるといわれています。
結核は、感染しても菌は体内で「休眠状態」のままで、免疫が正常な人の90%は生涯発病しません。しかし、高齢化、糖尿病や様々な疾患などで免疫が衰えてくると、何年経過しても発病することがあり、新発生患者のうち70 歳以上の占める割合は半数以上で、さらに増加傾向にあります。また、働き盛りの感染性のある結核患者は(2か月以上の)受診の遅れの割合が大きくなっています。自分でできる結核を減らすための対策の一つとしては、早期発見、治療が重要です。風邪だと思っていても、咳が2週間以上続く場合は結核の可能性も考えて医療機関を受診してください。( もちろん咳だけでは診断できませんし、咳が続く他の病気もたくさんあります。)
※罹患 病気にかかること